空のっぽと雲ひげ

サンドアートとつれづれ日記

予想外

 先日、愛息ちゅんちゅんがベビーベッドから落ちた。

真っ逆さまというわけではない。頭の横からごとん!と。

午後から予定が立て込んでいたので慌ててお昼ご飯を食べてる最中だったせいもあり、ちゅんちゅんが柵を乗り越えたことにまったく気付かなかった。「落ちた」小さな後ろ姿がいきなり視界に飛び込んできたのだ。反射的にベッドの上を見る。ちゅんちゅんがいない。ちゅんちゅんが落ちたのだとちゃんと理解することを、私の本能が許さなかった。少し遅れて、私の中のブレーカーも落ちた。すべてが一瞬の出来事だった。

 当のちゅんちゅんはというと、声なき叫びの直後ギャーッとひとしきり号泣、あとは何事もなかったようにケロッとしている。救急当番の小児科に電話すると、「大声で泣いて、意識を失ったりすることがなければまず大丈夫です。吐いたり、様子がおかしいようでしたら、脳神経外科へ行ってみて下さい」とのこと。

その日が日曜だったため、翌日念のため病院へ連れて行ってレントゲンを撮る。別状はなかった。

 今思い返しても、心臓がどきどきする一件だ。「取り乱す」ってことを体現した感じ。

 最初の一発があまりにでかかったおかげで?2度目の惨事には多少耐性がついていた気がする。

つい先日、ちゅんちゅんが茶箪笥を上り損ねて顔面を強打したのだ。つかまり立ちした赤ちゃんが後ろに反り返ったらすぐに支えようと固唾を飲んで周りを囲んでいた大人たちは皆、一瞬呆然とした。声なき叫び、そして号泣。大騒ぎする大人たちをよそに、この時もしばらくすると何事もなかったようにちゅんちゅんはケロッとしていた。

 二度あることは三度ある、という。

本日、3度目の惨事が起こった。掃除をしながら新しい遊びを思いついたので、さっそく試してみた時のこと。玄関マットの上に大きめのやわからい籐籠を置き、その中にバスタオルを敷いてちゅんちゅんを乗せた。リビングのフロアの上で乗り物ごっこをしようと思ったのだ。腰をかがめて「ほーれ」と言いながら自分の方へつーと引き寄せると、思ったより籐籠はスムーズに動いた。籐籠の中のちゅんちゅんが微かに笑った。ようし、これならもっと窓際で遊んだ方が楽しいかも知れない。向こうへ連れて行こう、と籐籠の片方の取っ手をぐいっと引っ張った瞬間、籐籠のやわらかさが災いした。遠心力で傾いたちゅんちゅんの小さな体が頭からごちんと床に投げ出された。驚きのあまり見開かれたちゅんちゅんの目が顔面蒼白になった私の目と合った。ちゅんちゅんの声なき叫び、そして号泣。

・・・しばらくして、やはりまた何事もなかったようにケロッとしているちゅんちゅんのおでこには、痛々しくも立派なたんこぶがあった。

 赤ちゃんは予想外のことをするからキケンだと思っていたのだが、予想外のことをするからキケンなのはどうやら赤ちゃんだけではないらしい。心しておこう。