空のっぽと雲ひげ

サンドアートとつれづれ日記

子守歌が生まれるとき

 赤ちゃんが生まれたら、おねんねさせる時に子守歌を歌ってあげたいと思っていた。それで、そのうちいくつか覚えようと思っていたのに、いざ出産まじかになってみると何かとばたばたしてそんな暇などまったくなかった。かくして、ようやく赤ちゃんを腕に抱いた私は、さてどうしたものかとほんの一瞬途方に暮れた。

 ところが、これこそまさに「案ずるより産むが易し」だったのである。子守歌というのは、赤ちゃんの顔を見ていれば自然に口からこぼれるものなのだ。どんなに陳腐でも音痴でも字余りでも、赤ちゃんは苦笑したり文句を言ったりしない。それどころか、いたいけな瞳でまっすぐにこやかに見返してくれる。どうやら、相手にまるごと受け入れてもらえるという安心感は、赤ちゃんよりむしろ保護者の方にあるらしい。

 さてその子守歌はというと、その都度まったくのオリジナルである。それが回を重ねる毎に、大人の性か、なんとなく推敲され加筆されある程度まとまった形になっていく。私自身だけではなく、まるでマニュアルでもあるかのように、私の両親や義母もまたそうであった。つまり子守歌は、赤ちゃんに対しての愛情がたかぶった時に、もうこれ以上は言葉で現せないという部分がメロディになって一緒に出て来るものなのかもしれない。